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糖尿病患者さんの血圧管理

糖尿病と高血圧はどちらも患者さんが多く、糖尿病は約1,000万人、予備軍も含めると約2,000万人1)
高血圧は約4,300万人2)と推計されています。また、糖尿病患者さんの中には、
血糖値だけでなく「血圧」も高い方が少なくありません3)
糖尿病と高血圧を合併したときの問題点や血圧の管理について、
生活習慣病の治療に積極的に取り組んでおられる那珂記念クリニック 院長 遅野井 健先生にお話を伺いました。

教えてくださるのは
那珂記念クリニック 院長
遅野井 健先生
那珂記念クリニック 院長 遅野井 健 先生

糖尿病と高血圧を
合併することは
多いのでしょうか?

糖尿病患者さんでは半数を超える方が高血圧を合併3)しているといわれていますが、当クリニックでも糖尿病患者さんの6割くらいに高血圧がみられます。反対に、高血圧患者さんにも糖尿病の予備軍にあたる方が少なくありません。糖尿病も高血圧も過食、運動不足、肥満、ストレスといった生活習慣が関わっていて、お互いが近い関係にあります。

糖尿病と高血圧を
合併すると、
どのような
問題が起こるの
でしょうか?

糖尿病も高血圧も放置すると、脳(脳卒中)、心臓(心筋梗塞など)、腎臓(糖尿病性腎症、腎硬化症)などの重要な臓器に障害をもたらします。これらの障害は、高い血糖や高い血圧が血管を傷つけることによって起こります。傷ついた血管は動脈硬化を起こし、狭く、詰まりやすくなります。
糖尿病では網膜症や腎症、神経障害の原因となる細い血管の障害(細小血管症)がみられますが、高血圧はその進行も早めます。ですから、糖尿病や高血圧では「血管を守る」ということが大切です。

また、糖尿病や高血圧の患者さんは、もう1つの代表的な生活習慣病である脂質異常症(コレステロールの異常)や肥満を合併していることが多く、これらの病気が重なると、心臓病や脳卒中を起こすリスクは単なる足し算では済まなくなってしまいます。しかし、高血圧も糖尿病も自覚症状が乏しいので、患者さんがご自身のリスクを実感するのは難しいことです。
とくに血圧や血糖値が高いとされる値を多少上回っている程度だと、「そんなに高くないから、まだ大丈夫」と思いたくなるかもしれません。けれども、血管を守ることの大切さを知っていただくために、私は患者さんに「血圧や血糖、コレステロールの検査値を1つずつ見たら大したことがないように思えるかもしれませんね。でも、実はそれぞれが別々の問題なのではなく、お一人の体の中で起こっていること。体の中での“積み重ね”が血管を傷つけてしまうのですよ」というお話をしています。

血圧も高い
糖尿病患者さんでは、
どのような治療が
必要なのでしょうか?

高血圧の治療の基本は生活習慣の修正ですが、心臓病や脳卒中を起こすリスクの高い人では、生活習慣の修正と同時に降圧薬(血圧を下げる薬)の服用を始めます2)。先ほどお話ししたとおり、糖尿病と高血圧を合併した患者さんでは、体の中で血管を傷つけるリスクの「積み重ね」が起きているので、血糖値も血圧もきちんとコントロールすることが大切です。
血圧については、収縮期血圧130mmHg、拡張期血圧80mmHg未満が目標2)とされていますが、1種類の降圧薬では下がらなくて、2種類、3種類の薬が必要になることもあります。一方で、患者さんによっては薬の種類や量によって血圧が下がりすぎる時間があったりもするので、私は目標を目指すだけでなく、一人ひとりの患者さんに合った血圧の下げ方を考えながら治療にあたっています。
近年、家庭用血圧計をお使いになる方が増えましたが、毎日の血圧の記録は患者さんがご自身の状態を知るためだけでなく、医師がその人に合った治療を見つける上でも役立ちます。

生活習慣に関して、血圧も高い糖尿病患者さんでは、
どのようなことに気をつけたらよいでしょうか?

糖尿病も高血圧も、適正な食事、適度な運動、適正体重の維持(肥満解消)が基本です。
糖尿病の患者さんは食事に関して、医師や栄養士から適正なエネルギー(カロリー)、栄養バランスの整え方などの指導を受けている方が多いのではないかと思います。
高血圧では「減塩」が重要で、塩辛い食品を控え、薄味の食事に慣れるようにすることが大切です。しかし、患者さん一人で頑張ろうとすると、長続きしないこともあります。ご家庭の食事全体を薄味にして家族ぐるみで慣れていくようにすると、患者さんは続けやすくなりますし、同時にご家族の健康にもメリットがあると思います。
また、最近は糖質制限を心がけている患者さんが少なくありませんが、白米などの糖質を控えた分、惣菜を多く食べると、塩分や脂質の摂取量が増えてしまうことがあります。何か1つを制限するのではなく、食事の内容全体を適切にしていくことが大切です。

血圧が下がっても、
治療は続けたほうが
よいのでしょうか?

血糖値や血圧が高くても、ほとんどの方は症状を自覚することがなく、また、血管の動脈硬化も心臓病や脳卒中を起こすまでは静かに進行します。実際、脈波伝播速度(PWV;心臓の拍動による脈が血管を伝わる速度。血管が硬いと速くなる)や足関節上腕血圧比(ABI;通常、足首の血圧は腕の血圧より高いが、血管が狭くなると低くなる)などの検査を行って、患者さんの血管の状態を調べると、動脈硬化が進んでいることが少なくありません。ですから、自覚症状がなくても血管が動脈硬化で固くならないように治療を続けます。
一方で、「降圧薬による治療を始めましょう」というお話をすると、患者さんから「薬を飲み始めたら、やめられないのでしょうか?」という質問を受けることがあります。“悪いことに一度手を染めると抜けられなくなる”に似たような誤ったイメージから服用をためらう方には、「生活習慣がきちんと修正されて、血圧が安定したよい状態になれば、薬の量を減らしたり、休止したりすることができる」ということをお伝えしています。

高血圧は誰でも知っている身近な病気ですが、曖昧な情報やイメージにとらわれることなく、服用を始めるとき、あるいは服用を始めてからも、気になることがあれば遠慮なく医師に相談してください。

  • 1)
    厚生労働省 平成28年 国民健康・栄養調査
  • 2)
    日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン作成委員会(編). 高血圧治療ガイドライン2019,ライフサイエンス出版, 2019
  • 3)
    西尾善彦. 内科 2020; 125(2): 223-226
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