減塩のススメ

監修:大阪大学大学院医学系研究科
老年・総合内科学 教授 楽木 宏実 先生

血圧と塩分の関係

私たちの身体のなかに存在する血液などの体液では、塩の構成成分であるナトリウムイオンが一定量に保たれています。私たちは塩辛いものを食べると、喉が渇いて水をたくさん飲みます。これは、食事から食塩を摂取して、ナトリウムイオンの濃度が高くなると、身体はその濃度を元に戻すために水分が必要となるためです。水分を摂取すると身体のなかの水分量が増加し、それにともない血液量も増加します。そして、心臓が血液を送る際に生じる血管への圧力が高くなり、血圧が上がります。最終的に、余分な水分は主に腎臓から尿として排泄されます。

身体のなかのナトリウムイオンの量は一定に保たれている / 塩分を摂取すると身体の中のナトリウムイオンの量が増加し、元に戻すために水分が必要になる

食塩摂取量と循環器疾患リスク

岐阜県高山市に在住する35歳以上の男女、約3万人を対象とした研究では、169品目の半定量的食品頻度調査票を用いて食塩摂取量を推算し、食塩摂取量と脳卒中による死亡リスクとの関係が調べられました。その結果、食塩摂取量が多い男性では、少ない男性に比べて、脳卒中による死亡リスクが高いことが報告されました1)。また、日本の45の地域に住む、40~75歳の男女、約11万人を対象とした研究では、35品目の食物摂取頻度調査票を用いて食塩摂取量を推算し、食塩摂取量が多い人は、少ない人に比べて、循環器疾患、脳卒中による死亡リスクが高いことが報告されました(下図)2)

統計学的に優位にリスクが高い

食塩感受性高血圧

食塩を摂取後に血圧が上がりやすい人を「食塩感受性」、上がりにくい人を「食塩抵抗性」と表現する場合があります。しかし、食塩摂取後の血圧の上がり方は個人差が大きく、明確に「食塩感受性高血圧」と定義するものがあるわけではありません。誰しも、食塩を摂取すれば多かれ少なかれ血圧は上がります。また、食塩を摂取しても比較的血圧が上がりにくい体質の人であっても、その体質は年齢や生活習慣によって変化します。血圧を上げず、循環器疾患リスクを減らすためにも、普段から適正な食塩摂取量を心がけることが大切です。

食塩の目標摂取量と現状

高血圧診療ガイドライン2019では、1日の塩分摂取量を6g未満にすることを推奨しています。世界保健機関(WHO)は、2025年までに食塩摂取量を1日5g未満にすることを目標にしています。

食塩6gってどれくらい?

減塩のポイント

薄味に慣れよう!

普段から料理に加える塩の量を調整し、減塩料理の味に慣れることが大切です。舌が薄味に慣れてくると、食材本来のおいしさを感じることができます。

香辛料や酸味をプラスして味変!

どうしても料理の味が物足りないときは、香辛料(胡椒、七味、唐辛子、ワサビ、カラシ、山椒)や、香味野菜(にんにく、しょうが、ねぎ、みょうが、しそ)などを料理に使いましょう。また、柑橘類を絞ったり、お酢をかけたりして、減塩料理に酸味を加えることも、おいしくいただくポイントです。

減塩を意識したメニュー選びを!

レストランでの食事は食塩量をコントロールできないため、食塩摂取量が増えがちです。なるべく外食は控えましょう。しかし、まったく外食しないわけにはいかないので、食塩摂取量が多いと感じたときは、家庭での食事で、食塩量を減らしてバランスを取るようにしてください。また、加工食品は塩分が多く含まれている場合が多いので、なるべく食べる頻度を減らしましょう。調味料を使う場合も「少な目」を意識してください。最近は、減塩醤油や減塩味噌など、低塩の調味料がいろいろ発売されています。このような調味料を上手に使いましょう。

麺類のスープは残しましょう!

ラーメン、蕎麦、うどんなどの麺類のスープには食塩が多く含まれているうえに、麺にも食塩が含まれている場合があります。そのため、すべて摂取すると食塩摂取量が多くなってしまいます。麺類が大好物の人も、スープを飲むのは一口、二口で我慢しましょう。

食べすぎに注意しましょう!

薄味の食品でも、食べる量が多ければ、それに比例して食塩摂取量も多くなります。また、食べすぎは身体にも負担がかかります。食べすぎによって肥満になると、糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症、肝臓病、腎臓病などの原因にもなるので、腹八分目を心がけましょう。

  • 1)
    Stroke 2004; 35: 1543-7
  • 2)
    Am J Clin Nutr 2008; 88: 195-202
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