「女性は血圧が低め」と思い込んでいませんか?

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40代までの女性には高血圧が少ない

40代までの女性に高血圧が少ないのは本当です。2018年に厚生労働省がおこなった調査によれば、高血圧の人の割合は30代の男性で17.6%、30代の女性では2.5%でした1)
女性が男性に比べて高血圧になりにくいのは、女性ホルモンのエストロゲンが分泌されているからです2、3)。エストロゲンは子宮や卵巣の成熟、妊娠・出産などに欠かせないホルモンで、血管のしなやかさを保ったり、自律神経の交感神経が働きすぎるのを抑えたりする働きがあります。この作用のおかげで、女性は高血圧になりにくいのです。

更年期以降は高血圧の人が急増

ところが、更年期(閉経前後の5~10年間)になるとエストロゲンの分泌が急激に減少します。そのため、50代になると高血圧の人が増え始め、60代、70代になるころには男性とほとんど同じになります4)
更年期には血圧が不安定で変動しやすいという特徴があり、さらに不安やストレスを感じやすいという特有の症状もあります5)。更年期はちょうど子どもの就職や独立、親の介護など生活の変化が起こる時期にあたるため、日々の不安やストレスが大きくなり、血圧に影響がおよびます。また、エストロゲンの減少によって交感神経の働きが活発になることも、高血圧を招く原因になっています。
高血圧を放っておくと、狭心症や心筋梗塞、脳卒中などのリスクが高くなります6)。若いころは低血圧でも、過信は禁物なのです。

妊娠中の高血圧は、お母さんと赤ちゃんに危険がおよぶ

もうひとつ、女性特有の高血圧に「妊娠高血圧症候群」があります。原因ははっきりとはわかっていませんが、妊婦さんの約20人に1人の割合で起こります7)
出産後は血圧が正常に戻ることが多いのですが、根本的な治療法はありません。妊娠中はきちんと産婦人科を受診し、適切な管理を受けることが重要です。

とくに更年期の高血圧を放っておくと慢性的な高血圧状態8)になるおそれがありますので、40歳になったらきちんと血圧をチェックしましょう。そして血圧が高めであれば、早めに医療機関を受診することと、生活習慣を見直すことが大切です。

  • 1)
    厚生労働省 平成30年国民健康・栄養調査報告
  • 2)
    平田恭信監修.高血圧 最新治療と食事.高橋書店, 46
  • 3)
    苅尾七臣監修.最新版 本気で治したい人の高血圧.学研プラス, 132-133
  • 4)
    苅尾七臣.高血圧 脳卒中・心筋梗塞・動脈瘤 循環器内科の名医が教える最高の治し方大全.文響社, 28
  • 5)
    一般社団法人日本女性心身医学会
    http://www.jspog.com/general/details_36.html
  • 6)
    平田恭信監修.高血圧 最新治療と食事.高橋書店, 34
  • 7)
    公益社団法人日本産科婦人科学会
    http://www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=6
  • 8)
    日本高血圧学会編.高血圧診療ガイド2020.文光堂, 83-84

監修:自治医科大学
内科学講座循環器内科学部門 教授
苅尾 七臣 先生

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