最近よく耳にする「NO」って血管の味方?敵?

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ノーベル賞を受賞した「NO」の効果とは?

昔から「人は血管とともに老いる」といわれます。その言葉通り、血管は年とともに硬くなり、弾力性が失われます。また高血圧の状態が長く続くことでも、血管は硬く詰まりやすくなります。これがいわゆる「血管の老化」で、危険な動脈硬化の最大の原因です。
そこで近年注目されているのが、主に血管内の細胞でつくられる一酸化窒素=NO(エヌオー)です。窒素と酸素の化合物であるNOは、自然界では、大気汚染や酸性雨の原因となる有害物質。しかし体内では、血管の筋肉をやわらかくしなやかに保ち、血管を広げて血圧を下げるだけでなく、血液中のコレステロールを下げ、血管を詰まらせる血栓の発生を抑える働きを担っています1)
つまりNOは、血管の若さを維持するための強い味方。ちなみにNOの血管における効果の研究は、1998年のノーベル医学・生理学賞を受賞しています。

血管をしなやかにする「NO」は正座で増やす?

体内のNOは、血流が速くなるときにつくられます。NOを増やし、血管のしなやかさを保つポイントは、適度な運動で血流をよくすること。例えば、ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動を20分以上続けると、血液中のNOが増加するといわれています1)。また、お尻(大殿筋)、太もも(大腿四頭筋・ハムストリング)、ふくらはぎ(下腿三頭筋)など、大きな筋肉を動かすことでも効率よくNOを増やすことが期待できます。
簡単なエクササイズでも大丈夫。朝夕2回、つま先立ち・かかと立ちを交互に2分程度行うだけでも、ふくらはぎの運動になり、NOの分泌を促進します1)
意外なところでは、正座のしびれもNOを増やします。正座を1~3分間続けて、足がしびれてきたら、ゆっくり立ち上がり、30秒程度足踏みをするとより効果的。ふらつくときは、つかまり立ちをしてもOKです2)。ただし、無理をしないこと。運動は途中に休憩を入れながら行うほうが、NOの分泌がよくなり、血管を広げる効果が2倍程度になるという研究データもあります3)

赤身のお肉と赤ワインで「NO」が増える?

NOの原料になるのは、アミノ酸の一種であるシトルリンとアルギニン。シトルリンはかぼちゃやキュウリ、スイカやメロンなどウリ科の野菜や果物に、アルギニンは赤身のお肉や鶏肉、大豆、ナッツ類などに豊富に含まれています。
また、赤ワインやチョコレート、生姜や玉ねぎ、ナスやブルーベリーなど紫色の野菜や果物に含まれるポリフェノール、緑茶や紅茶のカテキンも、アルギニンと結びついてNOの分泌を活性化する働きがあります。さらに抗酸化作用のあるビタミンCやビタミンEは、NOを保護する働きがあるといわれています3)。運動に加えて、毎日の食事を少し工夫することも、血管の若さを保つ大事なポイントです。

  • 1)
    van Haperen R, et al. J Biol Chem 2002; 277: 48803-7
  • 2)
    苅尾七臣 他.高血圧 脳卒中・心筋梗塞・動脈瘤 循環器内科の名医が教える最高の治し方大全.文響社, 211
  • 3)
    苅尾七臣 他.高血圧 脳卒中・心筋梗塞・動脈瘤 循環器内科の名医が教える最高の治し方大全.文響社, 212-213

監修:自治医科大学
内科学講座循環器内科学部門 教授
苅尾 七臣 先生

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