脳の働きと血圧との関係
血圧が高いと脳にも血液が勢いよく流れ込み、血のめぐりがよくなって脳の働きもよくなるはず、と思っていませんか?実は逆で、脳での血液の流れは遅くなり、働きも低下してしまうのです1)。
脳は呼吸や体温の調節などの生命維持をはじめ、からだを動かしたり、考えたり、記憶したり、たくさんの機能をコントロールする司令塔です。その中心的役割を果たすのが「神経細胞」。脳内で互いに連絡を取り合って、コンピュータのようにスピーディーに情報を処理しています。この細胞を働かせるために必要な酸素や栄養を送り届けているのが血液です。
しかし、高血圧によって血管に高い圧がかかると、血管はいつも張り詰めた状態になり、次第に厚く硬くなります。さらに血管壁に異物が沈着して血液の通り道が狭まることで、脳の血液の流れが遅くなり、いわゆる「頭がさえない」状態になってしまうのです。
高血圧は物忘れを招きやすい?
高血圧を放置していると動脈硬化が進み、脳の太い血管にできた血液の塊がはがれて詰まることで、その先の脳細胞が壊死してしまう脳梗塞を引き起こす場合があります。一度損傷した脳細胞は元には戻らず、機能が失われることになり、言葉のもつれや手足の麻痺などが症状として現れます。
しかしいま注目されているのが、細い血管が詰まることで症状が出にくい脳梗塞で、このタイプは「隠れ脳梗塞」ともよばれています。気づかぬうちに物忘れなどが少しずつ進んでいくのが特徴です。65歳未満の「若年性認知症」の主要な原因となっていますので2)、血圧が高くて、判断力が落ちた、物忘れが多くなったと思い当たる方は、注意が必要です。
人間ドックに脳ドックも加えよう
脳梗塞は、30~40代の人にも増えてきています3)。血圧が高い人、お酒をたくさん飲む人、タバコを吸う人などはとくにリスクが高いため4)、早期発見が大切です。
そこでおすすめなのが、脳ドックです。人間ドックと比べてまだなじみが薄いですが、脳の血管を映し出すMRIなどの画像で脳の病気をとらえることができます。
脳の病気は命にかかわることもありますし、後遺症で寝たきりになる場合もあります。若いからといって油断せず、定期的に脳ドックを受けたり、減塩や肥満予防など血圧を上げない生活習慣を続けることで、脳を健やかに保ちましょう。
監修:自治医科大学
内科学講座循環器内科学部門 教授
苅尾 七臣 先生