ストレスと血圧の深い関係
ストレスの本来の意味は、「外部から刺激を受けたときに起こる緊張状態」です。外部からの刺激には、仕事や人間関係の悩みという精神的なものだけでなく、気候や環境の変化など物理的なものも含まれます1)。多少の差はあれ、ストレスは誰にでもあるもの。しかし強いストレスが長く続くと、血管に負担をかけ、心身にさまざまなダメージを与えてしまいます。
ストレスを受けると、自律神経のうちの交感神経が刺激され、血管が収縮し、血圧が上がります。また副腎という臓器からは血液を固まらせるホルモン(カテコラミン)が分泌され、血液がドロドロになり、血栓(血の固まり)もできやすくなってしまいます2)。
「夫婦仲が悪いと血圧が高くなりやすい」「1週間のうち、もっとも脳卒中や心筋梗塞の発作が発生しやすいのは休み明けの月曜日」などの調査報告も、実は「ストレスと血圧の深い関係」を裏付けています3)。
血圧は喜怒哀楽に左右される?
ストレスだけでなく、喜怒哀楽といった感情も、血圧に大きく影響します。なかでも怒りやイライラは要注意。ふだん血圧が正常な人でも、イライラしている時は、なんと20~30mmHgも血圧が上昇することが指摘されています。また、仕事中になると10mmHgほど上がる人もいて、これは「職場高血圧」と呼ばれています3)。
一方、笑いは、交感神経の緊張をやわらげ、血管を拡張させて血圧を下げるだけでなく、がんと闘うNK細胞(ナチュラルキラー細胞)を活性化させるなど、さまざまな健康効果があることが報告されています4)。
さらにストレス解消でいえば、笑うよりも泣くほうが効果が大きいという研究もあります。涙の中にはストレス成分(副腎皮質刺激ホルモン)が含まれているため、泣くことでその成分が流し出されてスッキリするのです。なお、悲しみの涙より、嬉し泣きや感動の涙のほうが、より効果が高いといわれています5)。
すぐにできる、血圧を下げるちょっとした習慣
近年、怒りを制御する「アンガーマネジメント」が注目されていますが、これは高血圧予防にも、とてもよい習慣です2)。また、以下のような日常のちょっとした習慣も、ストレス解消と血圧低下の効果が期待できます。
- 起床時に窓を開けて朝日を浴びる2)
- 目覚めにコップ1杯の水を飲む(無糖の炭酸水もおすすめ)2)
- 空を見上げる5)
- コーヒーの香りを楽しむ(1日2杯程度を目安に飲む)6)
加えて、最近話題の「マインドフルネス(瞑想)」もおすすめです2)。これも、心身のリフレッシュだけでなく、血圧を低下させ、血管の若さを保つ効果が期待できます。実際、NCCIH(アメリカ国立補完統合衛生センター)が助成した臨床試験など多くの研究で、瞑想による「血圧の降下、不安感、抑うつ感、不眠の改善」などが示唆されています7)。もちろん、日本の座禅もマインドフルネスのひとつ。血管の若さを保つために、日常の習慣に加えてみてはいかがでしょうか。
![](/files/images/hypertension/trivia/column13/img_column13.png)
- 1)厚生労働省総合サイト 知ることからはじめよう みんなのメンタルヘルス ストレスって何?
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/first/first02_1.html - 2)島田和幸.血圧サージに殺されない50の方法.自由国民社, 106-107,152-153,156-165
- 3)島田和幸監修.ここが知りたい!高血圧を下げる新常識.永岡書店, 64-67
- 4)公益財団法人 長寿科学振興財団ホームページ 健康長寿ネット 笑いの健康効果
https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/warai-kenko/waraitokenko.html - 5)堀田秀吾.科学的に元気になる方法集めました.文響社, 146-147,183
- 6)公益財団法人 長寿科学振興財団ホームページ 健康長寿ネット コーヒーの健康効果とは
https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/koureisha-shokuji/coffe-kenkokoka.html - 7)厚生労働省『「統合医療」に係る 情報発信等推進事業』ホームページ 海外の情報 瞑想
https://www.ejim.ncgg.go.jp/pro/overseas/c02/07.html
監修:新小山市民病院 病院長 島田 和幸 先生