尿は夜中につくられる?
「夜、トイレに起きるので、いつも寝不足…」。人知れず、こんな悩みを抱えていらっしゃいませんか?夜間に1回以上、排尿のために起きなければならない症状を「夜間頻尿」といいます。日本には約4,500万人もいるといわれ、高齢になるほど増加します1)。
原因のひとつは、夜間につくられる尿が多くなることで(夜間多尿)、高血圧の人によくみられます。その理由は、腎臓と血圧の関係にあります。腎臓は血液中の老廃物をろ過し、余分なナトリウム(塩分)や水分とともに尿として排泄する役目を担っています。この働きのおかげで、体内のナトリウムや水分のバランスは一定に保たれます2)。高血圧の人は日中、血管を収縮させるカテコラミンというホルモン3)が多く分泌されるので、腎臓への血流が悪くなり、尿の量が減ります。そのかわり、夜間には腎臓に血液がいくため尿がたくさんつくられるのです4)。
夜間頻尿・多尿には病気が隠れていることも
そもそも、就寝中に何時間もトイレに行かずに済むのは、ホルモンの働きで尿をつくる量が減るからです。ところが、年をとるとこのホルモンの分泌が減るため、夜間の尿が増えてしまいます。
また、心臓の機能が低下すると、日中は筋肉などの活動している部分に血液がいきわたり、夜になってようやく腎臓に血液がまわるため、夜間につくられる尿が多くなります。これは、睡眠障害で眠りが浅い人や、眠っているときに何度も呼吸が止まる睡眠時無呼吸症候群の人にもよく起こります。
健康な大人の尿量は、1日あたり1.0~1.5リットル2)。多尿だけでなく、極端に少ない場合も何らかの病気が隠れている可能性がありますので、早めに医療機関を受診しましょう。
安眠を取り戻すためにも生活習慣改善を
高血圧の人の夜間多尿を改善するには、減塩と、肥満予防のための適度な運動習慣が大切です。
また、基本的なことですが、夜、寝る前に水分をとりすぎるとトイレが近くなります。とはいえ、水分が足りないと脱水症になるおそれがありますので、適度に水分補給することが大切です。また、アルコールやカフェインは利尿作用があるため、寝る前は避けたほうがよいでしょう。
夜中に何度もトイレに起きると寝不足になり、日常生活に支障をきたします。さらに、高齢者では転倒のリスクも高まります。年のせい、体質だからとあきらめず、生活習慣を見直して安眠をめざしましょう。
監修:八田内科医院 院長 八田 告 先生