摂りすぎた塩分はどうなるの?
私たちの体はとてもうまくできていて、体内環境をつねに一定の良い状態に保つ、優秀なシステムが備わっています。
たとえば、外食で塩辛い料理を食べたり、ビールをたくさん飲んでしまったり…。そんな日でも、体の中の水分量や塩分濃度はほとんど変わりません1)。このシステムで重要な役目を担っているのが、「腎臓」なのです。
腎臓には、全身をめぐった血液がつねに流れ込んでいます。その血液中には老廃物(体の中にできたゴミ)や、余分な塩分や水分なども含まれます。腎臓のすごさは、入ってきた血液をフィルターにかけ、体にとって不要なものや有害なもの「だけ」を尿として排泄していること。腎臓が体の中のゴミを処理してくれているおかげで、私たちの健康が守られているのです。
余分な塩分が、腎臓に過重労働を!?
この腎臓の働きを低下させる原因、その代表が「塩分の摂りすぎ」です。余分な塩分を排泄するために、腎臓はがまん強く、さらに働き続けなくてはなりません。
もし、腎臓が弱って十分に働かなくなったらどうなるでしょう。もちろん、老廃物や余分な塩分・水分など、体に溜めてはおけないものが排泄されにくくなります。また、腎臓は血圧調整に関わるさまざまなホルモンの分泌をコントロールしています。この役割を果たせなくなれば、血圧は上がってしまいます2)。
ほかにも、体液を弱アルカリ性に保ったり、赤血球をつくり出すのを助けたり、カルシウムの吸収を助けたりと、腎臓の機能はじつに盛りだくさん。そんな腎臓の働きが悪くなれば、健康が損なわれ、場合によっては命に危険がおよぶこともあります3)。
また、腎臓の働きが弱くなって腎不全(働きが失われる状態)になると、透析治療が必要になることも。透析治療とは、血液中の老廃物や水分を人工的にとり除く治療法で、多くの場合、頻繁な通院が必要で、1回の治療には3~5時間を要するなど、生活上の負担も大きくなるのです4)。
どう防ぐ? 腎臓病と高血圧の負のスパイラル
腎臓の働きが弱まると血圧が上がりやすくなり、高血圧になると腎臓の毛細血管が傷つくため、腎臓の働きが低下します。こうして、高血圧がますます悪化し、さらに腎臓病も悪化するという、負のスパイラルに陥ってしまうのです5)。
この悪循環にはまらないための重要ポイントが、「減塩」です。日本高血圧学会は、高血圧の人に、塩分摂取量「1日6g未満」を推奨しています。
減塩は毎日でなく、2~3日単位でも大丈夫。外食などで塩分が多くなりそうなときは、前日と翌日にしっかり減塩するなど、無理なく賢くコントロールしましょう。
監修:八田内科医院 院長 八田 告 先生